グレープフルーツ(ジュース)の量の違いで相互作用の程度に差がありますか?

血中濃度の増加率は、ジュースの飲用量に単純に比例するわけではありません。
もちろん、グレープフルーツジュースを2倍量飲用すると、消化管の代謝酵素も2倍の速度で不活性化することも考えられます。しかし、消化管での代謝酵素の不活性化速度が2倍になったからといって、消化管を通過する薬物量が2倍になるわけではありません。さらに、薬物によっては肝臓での初回通過効果も無視できませんが、これはグレープフルーツジュースによる影響を受けません。


まず、グレープフルーツ(ジュース)の相互作用メカニズムについて説明します。経口投与されたカルシウム拮抗薬は消化管から吸収され、消化管壁を通過して血液中へ取り込まれます。消化管壁には薬物酸化代謝酵素の一つであるチトクロームP450(CYP3A4)が存在するため、吸収されたカルシウム拮抗薬は血液中へ移行する前に一部分が代謝・分解されます。
グレープフルーツ(ジュース)を摂取するとジュース中の阻害物質が消化管壁に存在するCYP3A4に結合し、CYP3A4の代謝が不可逆的に損なわれるために、カルシウム拮抗薬が代謝・分解できなくなって、血液中へのカルシウム拮抗薬の吸収(移行)が増加することになります。

この時、ジュースを2倍飲用すれば阻害物質の量も2倍になり、失活するCYP3A4量も増加し、消化管壁での代謝阻害は2倍になると考えられます。
それでも血液中への移行量が2倍になるわけではありません。

たとえば、グレープフルーツジュースを飲用していないとき100個の有効成分が消化管壁を通過する際に50個代謝されると仮定します。ここでグレープフルーツジュースを200mLまたは400mL飲用した場合を考えてみましょう。200 mL飲用したとき代謝する量が20個減少するなら、400mL飲用したときには、代謝阻害物質の量は2倍になっていますから、代謝する量は40個減少すると仮定できます。しかし、血液中へ移行した量を考えると、グレープフルーツジュースを飲んでないときは50個、200mL飲用したときは70個、400 mL飲用したときは90個となり、400mLの時は200mLの2倍にはなりません。

したがって、グレープフルーツジュースとカルシウム拮抗薬の相互作用を血中濃度の増加率として考えるならば、相互作用はジュースの飲用量に必ずしも比例しません。