アムロジピンはグレープフルーツと相互作用が起きにくいカルシウム拮抗薬?


過去の臨床試験によりますと、アムロジピンの血中濃度はグレープフルーツジュースによってほとんど影響を受けないとされています。
Josefsson M, Zackrisson AL, Ahlner J. Effect of grapefruit juice on the pharmacokinetics of amlodipine in healthy volunteers. Eur J Clin Pharmacol. 51(2):189-93, 1996

Vincent J,et.al.,Lack of effect of grapefruit juice on the pharmacokinetics and pharmacodynamics of amlodipine.Br J Clin Pharmacol. 2000 Nov;50(5):455-63.

しかしながら、グレープフルーツ摂取によってアムロジピンの血中濃度が上昇し、血圧が低下したと疑われる報告もあります。
症例は62歳、女性。高血圧、SLE、ルーブス腎炎にてアムロジピン5 mg他降圧薬、利尿薬、ステロイド投与を受けていた。平成12年6月頃より食欲不振、食事を殆ど摂取しない状態であったが、グレープフルーツを15日間連日摂取していた。7月3日全身倦怠感を認め来院。脈拍触知不良、収縮期血圧80 mmHg以下とショック状態にて入院となった。入院後、補液、カテコラミン投与を行ったが、収縮期血圧80 mmHg台が持続した。入院時のアムロジピン血中濃度は、11.7 ng/mLと反復投与を行っている健常人と比べて高値であった。グレープフルーツに含まれるフラボノイドはジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の代謝阻害に関与する。今回の症例に関して、アムロジピン血中濃度上昇にグレープフルーツジュース摂取の影響の可能性も考えられた。若干の文献的考察を加えて報告する。
「グレープフルーツ摂取後アムロジピン血中濃度上昇が認められた一例」大橋能理ら、第183回日本内科学会東海地方会(2001.2.17)要旨集より引用

上述のように、過去の臨床試験によりますと、アムロジピンの血中濃度はグレープフルーツジュースによってほとんど影響を受けないとされています。では、なぜこのような症例が起こったのでしょう?

最初に言っておかなくてはならないのは、健常者にアムロジピン2.5 mgを連続投与した場合、Cmaxは3.5 ng/mL、5 mgを連続投与した場合は7.5 ng/mL、高齢者に5 mgを連続投与した場合14.9 ng/mLであったというデータが存在しており、このことから本症例の11.7 ng/mLという数値は決して高い血中濃度ではないという点です。

それではアムロジピンとグレープフルーツとの相互作用が起こる可能性に関して、念のためここで考察したいと思います。
まず、グレープフルーツを15日間連続して摂取していたことが大変気になります。このような過酷な状況の臨床試験結果がないので予想がつきませんが、もしかしたら、相互作用が消化管だけではなく肝臓でも起こった可能性が考えられます。これまでの研究から、通常量のグレープフルーツジュースであれば、小腸上皮細胞のCYPのみが阻害されることが明らかとなっています。しかし、グレープフルーツジュースの摂取量が過大であれば、阻害物質が肝臓まで到達し、肝臓での代謝まで阻害した可能性があります。
またグレープフルーツジュース側の問題として、阻害物質が多量に含まれていた果肉を摂取した可能性をあげることができます。

さらに、患者側の要因も考えることが出来ます。アムロジピンのバイオアベイラビリティは64%と他のカルシウム拮抗薬と比較して高いのですが、本症例の患者においてはそれが特に小さかったという可能性が考えられます。すなわちCYP3A4の活性が高く、グレープフルーツジュースの阻害作用を受けやすかったということです。

以上のどの考察が適当であるかは現時点では不明ですが、アムロジピンであっても相互作用が起こる可能性があるということを示唆していますので、基本的にはグレープフルーツジュースの摂取はなるべく控え、特に多量摂取は禁止にすることが適当であると考えます。

※アムロジピンの添付文書には、「グレープフルーツに含まれる成分が本剤の代謝を阻害し、本剤の血中濃度が上昇する可能性が考えられる。本剤の降圧作用が増強されるおそれがある。同時服用をしないように注意すること」との記載があります。