カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの影響には個人差があります

カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの影響にはかなり個人差があることがわかっています。
つまり、血液中の薬物濃度の変化で評価したとき、カルシウム拮抗薬とグレープフルーツとの相互作用がほとんど認められない人もいれば、かなり影響が出る人もいるということです。
Am J Clin Nutr. 2006 May;83(5):1097-105.(PMID:16685052)

相互作用の個人差の原因として主に二つ考えられます。
一つはカルシウム拮抗薬の代謝を担うCYP3A4の酵素活性の個人差、もう一つはジュース間、果物間、製品間での阻害物質(フラノクマリン類など)の含量の相違です。


CYP3A4活性の個人差

CYP3A4には大きな個人差があることは以前から知られています。その原因については不明な点が多いのですが、CYP3A4の遺伝子多型、アレル発現の偏りなどといった遺伝的背景におけるCYP3A4の発現調節の個人差、食事・食物の個人間の違いによるものであることが示唆されています。特に、小腸上皮細胞で発現しているCYP3A4には大きな個人差があると考えられています。
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツとの相互作用部位は消化管なので、特に個人差が大きくなってしまっているのでしょう。

果実、製品中の阻害物質の含量差

グレープフルーツの果実、グレープフルーツジュース、グレープフルーツを含有する食品において、阻害物質となるフラノクマリン類の含有量が相違していることが考えられます。グレープフルーツの実の中に含まれる阻害物質の量は生産された場所、季節、生産年によって違ってきます。同じ時期に同じ木から収穫された果実であっても違う可能性があるということです。また仮に同じ果実から作られたグレープフルーツジュースなどの「製品」であっても果汁の絞り方によって阻害物質の含量は違ってくる可能性があります。
したがって、同じ人がグレープフルーツを摂取しても、その種類が違えば、相互作用の程度も違ってくると考えられます。


カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの影響には個人差があるので、
単純に「カルシウム拮抗薬と一緒にグレープフルーツを摂取することは厳禁」と判断するのではなく、個別の状況を考慮して柔軟に対応することが肝要です。