グレープフルーツとカルシウム拮抗薬の通常製剤と徐放性製剤で相互作用の程度に違いはありますか


通常製剤と徐放性製剤の相互作用の程度を同時に比較した臨床試験は行われていませんが、異なる施設で行われたフェロジピンに関する臨床試験の結果をご紹介します。結果を比較すると徐放性製剤と通常製剤の間で、相互作用の程度に大きな違いはないと考えられます。

フェロジピンとフェロジピン徐放性製剤
グレープフルーツジュース250mLとフェロジピン5mg(通常製剤or徐放製剤)を同時に服用した場合、対照群と比較して血中濃度曲線下面積(AUC)では約2.5倍(通常製剤)、約2.9倍(徐放製剤)、最高血中濃度では約2.2倍(通常製剤)、約4倍(徐放製剤)と剤形による大きな違いは示されていません。

(通常製剤)PMID:1671113 
(徐放製剤)PMID:10945313

ニフェジピンとニフェジピン徐放性製剤
グレープフルーツジュース200~400 mLとニフェジピンを同時に服用した場合、対照群と比較してAUCでは1.09~1.58倍(通常製剤)1.13~1.23倍(徐放製剤)、最高血中濃度では1.04~1.27倍(通常製剤)1.59~1.8倍(徐放製剤)と剤形によってAUCに違いは示されませんでしたが、最高血中濃度には若干の違いが見られました。

澤田康文、大谷嘉一 「薬と嗜好品・飲料物・健康食品 医薬品とグレープフルーツジュースの相互作用臨床試験例 」薬局 52(2),1035-1052,2001


グレープフルーツとカルシウム拮抗薬の相互作用は、その中に含まれるフラノクマリン類による消化管内のCYP3A4に対する不可逆的阻害作用によると考えられています。CYP3A4の消化管内における存在部位は主に小腸上部であると言われています。したがって、徐放性製剤の場合、小腸内移動中において主薬の放出状態が通常製剤と相違していることが考えられるため相互作用の程度が違ってくることが想像されます。しかし、これまでこの点を積極的に検討した比較臨床試験はありません。上にいくつか臨床試験をご紹介しましたが、結論としては、徐放性製剤と通常製剤間での相互作用の程度には大きな違いはないことが示唆されます。なぜ差がないのかについて、詳細は不明ですが、徐放性製剤であっても消化管上部での吸収が大きな役割を担っていると考えられます。